たぶんもう愛せない
「海?何か心配事でもあるの?」

夕食後リビングでビールを飲む海の様子が何となく心ここに在らずという感じなのだ。

弥生とデキない上に、きっとヒステリックに責められて魂が抜けてしまったのかしら?

「ドラマの続きを見るからもうあっちに行くね」

声をかけても一瞬気がつかなかったようで、ピクリと体小さく反応させて「ああ、お休み」と言って、また何かを考えているようだった。

会社で何かあったのかしら?
だとしたらお義父さまは大丈夫かしら?
今日の会合はうまく行ったんだろうか?
今夜は遅くなるって言っていたけど、体に気をつけてほしい。

気がつくと、お義父さまのことばかりだ。

ベッドに入って、イヤフォンをつけてドラマに接続しておいてから、リビングのカメラに接続する。

海がスマホに何かを打ち込んでいる姿が映し出される。
時折、片手で髪をくしゃくしゃと乱暴に掻きながら画面を見ている。
弥生とのLINE?

暫く見ていると、スマホを耳元に持っていったので、通話に切り替えたようだ。

「通話はだめだと言っただろう。いい加減にしろ」

冷たい声で話したあと、スマホをソファに放り投げてから、頭を抱えるようにして座ったまま動かなくなった。

弥生と険悪になったのかしら?

私には関係ない。

スマホを置いて眠りについた。
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