たぶんもう愛せない
朝、海を送り出してから“あちら”の家の掃除に向かう。
弥生に何かを言われるだろうか、言われたとしても私がカメラを設置したという証拠もないしシラを切るしかない。

「おはようございます」

「奈緒さん、夜にそちらに行ったりしてごめんなさいね。まぁ、新婚ですものね」

「ふふふ、海ったら困った人ですよね。じゃあ、始めますね」

「ええ、お願い」

いつものように、シーツを剥がしてランドリーに出すものと一緒にしておいてから、ベッドメイキングをする。ベッドの下に隠してある盗聴器が気になるが、下手に動く訳にはいかない。
ハンディの誇りとりでサイドボードなどの埃を落としていくジュエリーボックスが気になるが、カメラに気づいた今ではほかに移動してるかもしれない。
さりげなくカメラを隠していたリースを見ると、きちんと元の場所に戻してあった。

気にしないようにロボット掃除機を起動したら、お義父さまの書斎に移動しようとした所で弥生がこちらを見ているのがわかった。

変な動きをしなくてよかった。

一通り済ませると、残り物でお昼を済ませてスクールに向かった。

歪な日常、いつ終わりにしたらいいのだろう。

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