たぶんもう愛せない
<暴走>
スクールの帰りに寄ったスーパーで珍しいものを見つけたので煮付けにすることにした。

お義父さま喜んでくれるかな。
北海道でたくさん美味しいものを食べてきただろうか?それとも忙しくてたべられなかったかな?
最近はお義父様のことを考えていると心が温かくなる。別にファザコンというわけでは無いけど、この異常な家の中でお義父様といる時だけは憎しみの感情を持たずにいられるからかもしれない。

魚の煮付けと卯の花の和え物、胡麻豆腐と味噌汁をカートに乗せた。

「奈緒さんおみやげです」
お義父さまはHOKKAIDOと書かれた紙袋を手渡してくれて中を覗くと、三方六とじゃがポックルに加えて白い恋人とマルセイバターサンドが入っていた。

「すごーい、大好きなものばかり。楽しみながらいただきますね、本当にありがとうございます」

珍しく弥生がダイニングに入ってきた。
「匠さんがお土産を買ってくるなんて珍しいわね」

「弥生はいらないと言っていたから、今まで買ってこなかったんだ」

もしかすると、カメラのことで私の行動と気にしているんだろうか?

「私が、お義父さまが北海道に行かれると聞いてお願いしたんです」

「ふ〜ん」というと、料理が並び終えるまで席につくことがなかった弥生がダイニングの椅子に座った。

やっぱり、何かを探っているのかも。
何もしらない、気がつかないフリをしないと。


エイの煮付けなど料理をテーブルに並べていくとお義父さまが魚に気がついた。

「これは?」

「エイです。北海道ならカスべっていうんですよね、向こうで美味しいものをたくさん食べてこられたかもしれないけど、たまたまスーパーで見つけたので煮付けにしました」

「へぇ、向こうではラーメンと弁当だったから。」

「エイは軟骨の部分がコリコリとして美味しいんです、コラーゲンもあるんですよ」
ニッコリと弥生に微笑みかける。

「そうなの、それならしっかりと食べないと」

料理を並び終えて家に戻ろうとした時、弥生が脈絡もなく話し始めた。

「そういえば匠さん、最近は熱海に行かないのね」

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