レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
01.プロローグ
窓の隙間から冷たい風が吹いて白いカーテンがふわりと揺れた。
橙色の光がガラスに反射して、私の視界に入り込んでくるから思わず目を細める。
「じゃぁさ、ずっと親の決めた道を歩いてきたんだー?」
目の前には、制服を身に纏う男の子が足をゆらゆらとさせベッドに腰かけていた。
「ねぇ、先生。俺とレールアウトしよ?」
たった今、思い付いたように悪びれもない軽いトーンの声。
「俺とさー、道はずしてみない?」
にっこりと口元を緩ませるのに、長い前髪から覗くその瞳には光が見当たらない。
その笑顔は天使みたいに柔らかい筈なのに、不思議とどす黒い悪魔のようにも見えた。
ギシッと、ベッドの軋む音が部屋に響き渡る。
この子がゆっくりと私に近付いて──。
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