レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
走ってきた彼女は、私の手を持って刃物を握らせて勢いよく自分を刺したのだ。
ぐにゃりとしと感覚。皮膚を貫いて、肉に到達する鈍い重たさがリアルに感じるから全身がガクガクと大きく震えていく。
「は、離して……や、やめ…」
離れたくても、彼女の手が私の手を離さない。衣類が赤黒い血で滲んでいくから、目を反らした。
でも、その刃物が臓器により深く食い込んでいくのが指先の神経を通して伝わってくる。
「奈都っ、離せよ!!」
「あ、ぁ…ぁ……や、」
グリグリと左右に動かされて、彼女のお腹辺りの中身がぐちゃぐちゃになっていくのを感じるから、自制心が、頭がおかしくなりそう。
太央も奈都さんの腕を持って、私から引き離そうとしてるけれど、こんな細い腕のどこから力が出るのか。
「ふふっ、あはは……ぐっ、」
ガードマンが駆け寄ってきて、彼女から刃物が抜けた途端、大量の返り血が飛んできた。
真っ赤な世界が一面に広がっていく。
ヌルヌルとした液体の雨が降ってきて、青かった筈の空が赤黒く染まっていった。
現実とは思えない、あまりの尋常でない光景に、苦しくて呼吸ができなくて。
プツンと糸が切れて、頭が真っ白になる。
その後のことは、覚えていない──。