レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「どうしてこんなもの持ってるの?」
彼女の右手には、白い錠剤の入ったプラシートが1欠片。あー、上着のポケットに入れっぱだったのは失敗だった。
「あー、ちょっと。知り合いに貰ってー」
「そうなの?でも、これ……市販されてる薬じゃないよね?」
怪訝そうに首を傾げて、彼女が俺のとこに近づいてくる。
さっすが、保健の先生。一瞬見るだけですぐ分かっちゃうか。
「俺、夜眠れてなくてー。心療内科で処方して貰ってるんだけど。あ、他の先生に内緒にしてくださいねー?」
ちょっと困ったように眉を下げて、「あんま知られたくなくて」と両手を合わせる。
「……そうなの。何かあったら何でも相談のるからね」
「はい、ありがとうございます」
いい先生なんだよな。この学校の中では1番に生徒のメンタルも考えてくれて。顔も綺麗だし。
「ねぇ、黒木くん。……三木先生、どう?」
「あー……。志保先生はー、今のとこ生きてますよー」
橘先生が俺の様子を伺うよう、拾った薬を俺の手に落とした。
志保ちゃんも、彼女だけとは仲良かったもんなー。
学校を出てからは、いつものバスに乗る。行き先は決まっている。
慣れた道のりを歩いて、アパートの階段をのぼって扉の前でリュックのポッケから鍵を取り出した。
インターフォン無しに、鍵をさして扉を開ける。
大好きな志保ちゃんに会うために──。