レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「分かった、食べればいいんでしょう」
レンゲを持った俺の手を取って、それを口の中へと運び込んだ。
「あは、食べたー。はい、もう一口」
また、雑炊をすくったレンゲを近づければ、今度は口を大きく開ける。
まるで、鳥の雛みたいに大きく開けるから、心がくすぐったいような変な気持ちになってくる。
「はい、よく食べられましたー」
本来なら、俺じゃなくて兄さんが来るべきなんだろうけど。
あの病院での事件の後に、兄さんがこの家に来ているのを見たことがない。
「じゃー、歯磨き一緒にしよー?」
「……」
「あはは。ほらほら、ベッドからおりて」
力ずくで引っ張れば、志保ちゃんと2人でベッドの下に転げ落ちて俺だけが爆笑する。
兄さんに何で行かないのか聞いたら、資格がないとか何とかブツブツ言ってたけど。
どうして、こんな愛らしいものを手放せるのか分からない。俺だったら1度でも捕まえたら、どう足掻いても絶対に逃がしてあげないのになー。
奈都との関係がバレてまずいことになりそうだ、とか。志保ちゃんの事より、奈都の傷のことより、何よりも兄さんが自分の心配をしていることにはちょっと驚いたけど。
第1に自分の保身ばかり気にするなんて、意外と兄さんもただの人間だったんだな。と、思った。