レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「ねぇ。今日、志保ちゃんち泊まってっていーい?」
頷きはしないけど、駄目だとも言わない。
1人でいたくない志保ちゃんにとって、誰かが部屋の中にいる状態は安心するらしい。
こんな状態になっても、実家に帰らないなんて。時々おばさんは来るけど、あの頭のカチカチな頑固親父と何かあったのかな。俺からは聞けないけど。
「お風呂沸かしたから、入っておいで」
「……」
「それとも、一緒に入るー?」
ニヒっと歯を見せて笑って、志保ちゃんの手を引いて引きずるように脱衣場へ連れていく。
ペタンと床に座りこむ志保ちゃんの前にしゃがみ込んで、シャツのボタンに手をかけて1つ、2つ外したところで、
「……大丈夫、1人で入れる」
ずっと黙っていた志保ちゃんが自分の開いた襟元を右手でぎゅっと閉じる。
「えー、遠慮しなくていーよ。体洗ってあげるよー」
「……い、いりません」
俺が「よいしょ」と、上着を脱いで制服のボタンを外そうとしたところで。
「いらないって言ってるでしょう」
「あはは。無理に体洗わなくていいから、ゆっくり湯船につかりなねー」
少しだけ前の志保ちゃんの雰囲気が出てくるから、愛しくて思わず口元が緩んだ。