レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「さてとー、片付けるか」
志保ちゃんがお風呂に入ってる間に食器の片付けをして、軽く部屋の中をペーパーモップでせっせとゴミを取る。
俺だって、あの兄さんと半分血が繋がってるのだから片付けが上手なわけがない。むしろ下手だ。
なのに、健気だよなー。志保ちゃんのためにここ1ヶ月すごーく尽くしてると、自分でも思う。
なんで、ここまでするんだろう?
──太央は悲しむのが苦手なのかもね
そうだ、あの時。志保ちゃんが本当の俺に気付いてくれたから。
病気がちだった母親が死んだ時、俺は涙も流さなかった。家の中でも外でも、ニコニコと笑っていた。
感情がおかしい、冷たい子供だ。と、影で言われてるのは知っていた。
でも、笑顔のまま聞こえていないフリをしていた。
──私は笑うのが苦手だけど……、太央は悲しむのが苦手なのかもね
小さな俺に、まだ小学生だった志保ちゃんはそう言って手を出した。
──志保ちゃんは、冷たいと思う?僕のこと
──別に思わないわ。寂しいのが伝わってくるし……
そうか。悲しむのが苦手なんて考えたことなかった。
笑顔なのに、悲しくて寂しい。
パズルのピースがはまった時のように、その時はじめて、不思議と今まで不安定だった心の穴が埋まった気がしたんだ。