レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
奈都の狂ったような高笑いが、耳の奥にいつまでも張り付いているから。うえー。思い出すと今でも気持ちが悪くなる。
志保ちゃんは無理矢理とはいえ直接だもんなー。相当だよね、可哀想だと小さな息を吐いた。
「たっ、太央っ、太央……」
「志保ちゃん、俺はここにいるよ。1人じゃないよ」
現実の世界を確認するよう何度も俺の名前を呼ぶから、俺もそれに答えるしかない。
大きな瞳に涙を浮かべて、俺の背中にぎゅっと強く腕をまわされる。
こうやって、志保ちゃんから触ってきてくれることが増えたから、俺は嬉しいけど。
小さくなった志保ちゃんの胸がちょっと当たるから。
あー、我慢するのも結構辛いんだけどな。今はそんな雰囲気じゃないから、やっぱり我慢するしかないんだろうな。
けど、この腕の中に志保ちゃんがいて。
志保ちゃんが俺の名前を呼んで、俺を求めてくれて、俺のことを必要としてくれてどれだけ嬉しいか──。
「ずっと、一緒にいようね。志保ちゃん♡」
どんなに願っただろうか、この幸せを。
この小さな部屋で、2人このまま一生を過ごせれば、それでいーよね。