レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
私も外面しか見えていなかったのだから、彼を責める資格はない。
思い沈黙の後に、成央さんが普段より一段と低い声を捻り出した。
「さっき、廊下で志保ちゃんの父親と会ったよ」
「……え、」
「とても激怒していたよ。奈都との関係がバレて、君との婚約は解消するって。部署も地方の現場に移動になるそうだよ」
思わず顔を上げれば、成央さんが眉を歪ませて自嘲気味に笑いを見せる。
「表向きは"経験"という事になるけど……事実上、左遷だよ。クビと変わりない。あぁ、こんな筈じゃなかった。将来有望だとか信頼しているとか言っていたのに、君の父親は簡単に人を切り捨てられるんだ」
成央さんは額に手を当てて、深いため息を大きくついて言葉を続けていく。
「奈都と……、君があんな事をするから。何で止めなかったんだ?いい年した大人が、流されるにも程があるだろ!?」
「…………ご、ごめんなさい!」
どんどん荒ぶる口調と振り上げられた拳に、"殴られる"ふいにそう思って自身の顔を両手でパッと守った。
けど、どんなに待っても彼が振り下ろしてくる事はなくて恐る恐る目を開けると、そこには、悲しげに私に視線を落とす成央さんの姿があった。
ふらふらと病室を出ていく成央さんを見送って、私自身が本当の彼を見ていなかったのだと、改めて実感していく。胸の中が申し訳ない気持ちで溢れていった。