レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加




次の日、母が病院まで迎えに来た。退院だそうで、受付で手続きをしてから外に出た。
冷たい空気に、病室との温度差を感じつつ、2日ぶりに浴びる太陽の陽射しにクラクラする。と同時に、このエントランスでの出来事が頭を(よぎ)る。



「志保、大丈夫?」

「……はい、今行きます」


ガードマンは2人になっていた。あの時いた人と同一人物なのか、帽子を被っていて分からない。いや、そもそも顔なんて覚えていない。

周囲を行き交う人達は、通院またはお見舞いなのか分からないけど、私だけが異質に感じるのは何故なのか。何かが違う。

母親の後について歩くも、ぐにゃんと地に足が着いてる感じがしない。

母親が呼んだタクシーに乗り込もうとした瞬間、真っ赤な雨が降る光景が頭に浮かび上がった。



「ひぃっ、……」

「志保?どうしたの?」

「何でも……ない、です」


冷や汗が滝のように流れ出て、自分で止めることが出来ない。全身の血の気が引いていくのが自分でも分かる。



「大丈夫っすかー?出発しますよ」


ドライバーの少し乱暴な声のトーン。タクシーのドアが閉まる音にすら過敏に反応してしまい、むしろ恐怖すら感じた。

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