レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
この重苦しい空気の部屋に、あの子の明るい声が聞こえてくるから。理解が追い付かなくて、一瞬 幻聴かと疑った。
バタバタと誰かが走ってくる音。と同時に、ベッドのスプリングが勢いよく跳ねて、毛布の外側から強く抱き締められた。
「ひぃ……っ、」
あまりの驚きに、被っていた毛布を半分下ろして顔を出せば。
「えへへ、合い鍵。そこでおばさんに貰っちゃったー」
すぐ目の前に、私の部屋の鍵をチャリンと持った太央がいた。
そして、子犬のように目を輝かせて私ににっこりと笑顔を向けて言葉を弾ませていく。
「良かったー。生きてるか心配してたんだよー。学校こないし、全然スマホ出ないし、メッセ既読にならないしー」
ペタペタと確認するように顔を触られて、そのまま両手で頬を強く潰された。
「痛っ……、や、やめ……」
「俺、志保ちゃんのこと。すっごく心配したんだよー?」
眉を下げた太央が下から覗き込んでくる。その瞳が水気を含んでいるようにも見えて、胸に痛みが走った。