レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
刃先の尖った一般的な家庭にあるソレの、黒い柄の部分が手に触れた。
無理矢理握らされて、あの人の体の中身がぐちゃぐちゃになっていく様が脳裏に浮かぶ。
生温かくて、ヌルヌルして、視界に入れたくないのに、五感全てが覚えていて全身が強い拒否反応を起こす。
「……やっ、離してぇっ、………っ」
反射的に手を引っ込めて、後ろに尻もちをつくよう倒れ込む。
真っ赤な空が広がって、全てが赤色に染められていく。
苦しい。逃げたいのに。もう消えて無くなりたいのに。
私は本当に駄目だから、1人じゃ何にも出来ない。
その時、ふわりと薄暗い部屋に風が入ってきた。外の空気だ。
窓も完全に閉めていた筈なのに、カーテンが微かに揺れている。
太央が換気でもしていったのだろうか。
かすかな隙間から差し込んでくる日の光が反射して、眩しくて思わず目を細めた。
──志保ちゃんの、先生ぶるところ好きだな。
にっこりと口元を緩めて、柔らかい笑顔を見せる。
制服を身に纏って、保健室のベッドに腰掛けて、足をぷらぷらとさせるあの子は何て言ったっけ?