レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
──もし、先生がぼろぼろになって死にたくなったら………、
ガチャガチャガチャ。玄関の鍵が乱暴に開けられる音がする。
ドアが開くと同時に機嫌の良い鼻唄が耳に入ってきた。
「志保ちゃん、ただいまー。いい子にしてたー?」
太央が上着を脱ぎながら、キョロキョロと私を探している。"おかしいなー"なんて言いながら。
そうだ、私は1人じゃないんだ。この子がいる。
「太央っ!」
「おわっ、びっくりしたー。何でキッチンにいんのー?」
まだあどけない瞳を丸くさせて、嬉しそうにへへっと私を見下ろす。
そんな太央に走るように近付いて、制服のシャツの胸元を両手でグッと掴んだ。
「ねぇ、太央!あ、あなた前に……、」
「うん?」
「私が、ぼろぼろになったら、一緒に逝ってくれるって……、そう言ったわよね?」
目を大きく見開かせてから、ポカンと2人視線を合わせた。
それから太央が目を細ませて、あまりにも幸せそうに笑うから。
「うん!志保ちゃんとならどこでも行くー」
声を弾ませて、ギュッと強く抱き締めてくるから、なんだか、とても幸せだと感じた。