レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



前に、ずっと親の決めた道を歩いてきたと、太央が私にそう言った。だけど、この子だって同じじゃないか。
にこにこと笑顔を作り、親の作った小さな箱庭の中で過ごす。抵抗をして必死に足掻いても、結局は引き戻されてしまう。


でも、それも全部おしまい。2人で一緒に終わりにするんだ──。









「志保ちゃーん、大丈夫?」

「……うぅ、」

「出られる?歩けるー?俺の肩つかまってー」


運転席の扉から太央が私を抱え出し、引き連られるよう歩かされた。



「すみませーん、早く着いちゃったんですけどチェックインできますかー?」


予約していた宿のフロントに入りソファに座らされる。
気持ちが悪い。喉の奥底から酸っぱい胃液が今にも上がってきそうだ。


この1ヶ月近くほぼベッドの上で過ごし、部屋に引きこもっていた私は体力も酷く落ちていた。

冬の外気に、容赦なく照りつける陽射し。
それに加えて慣れない高速道路、久し振りの長い距離の運転。
他人の姿や話し声、クラクションの音、信号の光さえも。外の刺激はとてもじゃないけど、並大抵のものじゃなかった。

光沢のある黒いソファにそのまま頭を倒すと、素材がひんやりとしていて頭痛がほんの少しだけ緩和された。


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