レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
14.──




周囲は暗闇に包まれる。砂利の混じった枯れ葉だらけの道を車でだいぶ走らせてきた。
私達が辿り着いたのは、旅館から数キロ離れた山奥だ。

結局、疲労で動けなくなった私は、あの後ずっと横になってしまい。ようやく夕方にチェックアウトを済ませ旅館から出発したのだ。



「シミュレーションゲームみたいで、楽しかったー」


途中から太央に車を運転させてしまったのだけど。今の私にとって、モラルや社会のルールはどうでもいい事だった。



「この辺りでいいかなー?」

「ええ」


車のヘッドライトを消すと、ますます周囲の景色が分からなくなる。
2人で車の外に出ると、冷たい風が頬を突き刺して寒さで全身が大きく震えた。



「志保ちゃん、見てよー。星が綺麗だよー」

「……そうね」

「月もまんまるだー」


聞こえてくるのは鳥であろう不気味な鳴き声。それと、まるで遠足にでも来たかのような太央の明るく弾む声。

真っ暗な山中に星と月明かり。隣に立つ太央の顔に目を向けると、やっぱりこの子は笑っていた。
手を伸ばしてそっとその子の指先に触れれば、もっと嬉しそうな顔を見せて、強く握ってブンブンと腕を振り出した。

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