レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「太央、あなた手を振り過ぎよ」
「うん、ロマンチックだねー」
「腕がちぎれそうよ」
「えへ、恋人の夜景デートみたいだねー」
「寒いわ」
「うん、ギュッとしてあげるー」
右手は繋がれたまま、反対の手が背中に回された。
あまり身長差がないから、太央の顔と至近距離になる。目が合うと、ふんわりと目を細めて笑う男の子がいた。
「何で、私なの?」
「なにがー?」
「どうして、そんなに私を好きでいてくれるの?」
「えー、なんでー?」
「私なんて、何も無いのに……つまらないでしょう?」
「あは、本当だよねー」
「……」
太央の上着の中に顔を押し込められて、もっとギュッと強く抱き締められるから。今度はこの子の顔さえ見えなくなった。
「志保ちゃんが、寂しくて悲しくて泣きたい俺を見つけてくれたから」
「……え?」
「それに、志保ちゃんも俺だけに違う顔見せてくれたから──」
凍りのように冷えた掌で両頬を掴まれて、グイッと顔を上に持ち上げられる。
その瞬間、唇をパクリと食べるよう吸い込まれてすぐに舌が入り込んできた。