レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



「太央、あなた手を振り過ぎよ」

「うん、ロマンチックだねー」

「腕がちぎれそうよ」

「えへ、恋人の夜景デートみたいだねー」

「寒いわ」

「うん、ギュッとしてあげるー」


右手は繋がれたまま、反対の手が背中に回された。
あまり身長差がないから、太央の顔と至近距離になる。目が合うと、ふんわりと目を細めて笑う男の子がいた。



「何で、私なの?」

「なにがー?」

「どうして、そんなに私を好きでいてくれるの?」

「えー、なんでー?」

「私なんて、何も無いのに……つまらないでしょう?」

「あは、本当だよねー」

「……」


太央の上着の中に顔を押し込められて、もっとギュッと強く抱き締められるから。今度はこの子の顔さえ見えなくなった。




「志保ちゃんが、寂しくて悲しくて泣きたい俺を見つけてくれたから」

「……え?」

「それに、志保ちゃんも俺だけに違う顔見せてくれたから──」


凍りのように冷えた掌で両頬を掴まれて、グイッと顔を上に持ち上げられる。
その瞬間、唇をパクリと食べるよう吸い込まれてすぐに舌が入り込んできた。


< 156 / 219 >

この作品をシェア

pagetop