レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
この子のこんな崩れた顔はじめて見たわ。
普段と違う顔が面白いだなんて、太央もこんな気持ちだったのだろうか。
そんなことは、お構いなしに言葉を続けていく。
「あなたも知っている通り、交際経験は1人だけだし」
「んー……??」
「絶頂を体験できたのも、太央のおかげ」
「えー、……どういたしまして」
「昨日の夜ね、はじめて精神的にも肉体的にも満たされた気がしたの。凄くあなたの……、太央の気持ちが伝わって嬉しかった。誰かに認めて欲しかった。でも、求める方法も分からなくて、私、……寂しかったのだと思う」
「……」
「太央、ありがとう。感謝しているわ」
うまく笑えているか分からないけど、気持ちが伝わるようキュッと口角を上げる。
まだ唖然としている太央の冷たい頬に手を当てて、はじめて私からこの子にキスをした。
「うわー、志保ちゃんからキスしてくれたー」
「ふふ、大袈裟ね」
「わー、志保ちゃんが笑った」
ケラケラと笑い声をあげる太央は、本当に嬉しそうな表情を見せて私の頭を引き寄せる。
もっと早く、気が付けば良かったのに──。
「ねぇ、太央。そろそろ寒くない?」
「うん、寒いー」
「もう、中で温まりたい」
「じゃー、車の中であったまろー。ずっと2人で」