レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



手を繋いだまま車内へと乗り込んだ。
後部座席に2人並んで腰を下ろして、車の助手席を前方へ倒す。その上にネットで購入したばかりの暖房器具を設置する。

太央が鞄からアルミシートに入った錠剤を出して、自身の掌に乗せた。



「飲んで、眠くなったらつけよー」

「これ、太央の?」

「うん、睡眠薬。俺も最近あんま眠れなくなってたから病院で貰ったんだー。よく効くでしょ?志保ちゃん、昨日もこれでよく眠ってたんだよー」

「眠れないっていつから?」

「うーん、お父さんが……。えっとー、お見舞いに行った時あたり?」


奈都さんの腹部を刺した日からだろうか。あの人の名前を出さないあたり、太央の優しさが伝わってきた。


この子だって目の前であんな光景を目撃したのだ。目を瞑っても脳裏に浮かびあがる、あの残酷な景色に何も感じていない筈がない。

ドクンドクンと大きく心臓が脈打ち出す。




「そうだったの、私、あなたの事まで気にかけられなくてごめんなさい」

「だからー、謝らないでよ。悪いクセだってばー」

「だって……」

「志保ちゃん、泣きすぎだってー。ほら」

「うん」


太央が手を差し出した。




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