レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
この子の掌から薬の粒を取って口に含み、ペットボトルのお茶で流し込んだ。続けて太央も同じように薬を飲み込む。
暖房器具のスイッチを回すとボッと音を立ててつけて熱板が橙色になった。
手を伸ばせばじわじわと熱く、車内の空気がほんのりと温かくなっていく。
「あったかいねー」
「そうね……」
身体だけじゃなくて心も温かくなっていくのを感じるから。隣にこの子がいてくれるから、不思議と何も怖くなかった。
あの恐怖の夢、社会の柵から逃れてやっと楽になれるのだ。
目が合うと、ニコッと笑ってくれる存在がどれだけ心強いものなのか。本当に、今、この場で1人じゃなくて良かった。
頭がぼんやりとしてきて、瞼も重くなっていく。身体がダルくなり急激な睡魔に襲われて、意識が遠退いていく。
「志保ちゃん、おやすみー」
「おやすみなさい、太央」
私達は指を重ねて離れないよう、しっかりとお互いの手を握ったまま、ゆっくりと目を閉じた───。