レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
15.高架橋
「しほ、おともだちとあそびたい」
小さな私が泣いていた。その隣で母親が困ったように眉を下げる。
学習塾、スイミング、英会話、バレエ、ピアノと毎日のように、お稽古が続く日々。
付き合う友達も決められて、遊ぶ時間さえない事が嫌で仕方がなかった。つまらなかった。
級や教本が進むと母親が頭を撫でて褒めてくれたのは嬉しかったけど。
他の子はもっと自由に走り回っているのに、私は何で走っちゃいけないの?いつも、そう思っていた。
「どうして、しほはあの子とあそんじゃいけないの?」
「どうして、しほはおべんきょうしなきゃいけないの?」
「どうして──……、」
疑問を投げ掛けると母がとても困った顔を見せた。だから、「どうして」、「なんで、しほだけやらなきゃいけないの?」という不思議は心の中にしまう事にした。
子供の頃からそうだった。
自分の意見を持つことを諦めて、人の顔色を伺って、大人の言う通りに過ごしてきた。
真面目で決まりを守り、問題を起こさない。
ただ静かに小さな社会の中でつまらない毎日を繰り返すだけの人生。