レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



なんて、自分の思考にゾッとした。一瞬でも、世間体が頭に過った事をひどく後悔する。

太央は無条件にどんな私でも受け入れてくれたのに。自分の身の心配をするなんて最低だ。




──じゃぁさ、ずっと親の決めた道を歩いてきたんだー?


──じゃぁ。断れば良かったじゃん。自分で


──今の時代さー、倒れるまで働くことないじゃん


──婚約者が他の女とヤってるのが平凡って言えるの?



──結局はー、1人じゃ何もできない腰抜け女なんだよ


誰よりも、私を見ていてくれた。
私より私の事を理解して、大切に優しく包み込んでくれた。


目頭が熱くなって、ブワッと涙が溢れ出る。

そのままの私を必要としてくれた太央。
もし、この子がこの世界からいなくなってしまったら……。私はどうやって生きていけばいいの?






「…………………………た、太央、」


喉から掠れるような小さな声が出た。



「志保ちゃん?なんなんだ、この状況は!?」

「…………た、太央…」

「なんで、こんな事になってるんだよ?」

「…………太央、手…」


強くしっかり握っていたのに、意識が無くなると簡単に離れてしまうものなのか。
鉛のように重い腕を伸ばして、太央の指先に触れた。







「……………うう、うううぇ、気持ち悪いー」




< 167 / 219 >

この作品をシェア

pagetop