レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「うー、ヤバイ、頭痛いー。クラクラするんだけどー」
「当たり前だろ!この馬鹿!!」
成央さんが太央を抱き抱えたまま、頭をガンッと叩く。
太央の声だ。確かに聞こえた。
無事だったんだ。安堵で一気に全身の力が抜ける。
「車の中で、あんな……一酸化炭素中毒起こすに決まってるだろう!俺が来なかったら死んでたんだぞ!?」
「……頭痛いのにー、叩かないでよ。暴力はんたーい」
良かった。声のトーンは弱いけど、太央は太央のままだった。
「なんで、お前は、……っ」
「……兄さんに言われたくない。兄さんの嘘つき」
「は?」
「……志保ちゃんを幸せにするって言ってたのに、なんで奈都と別れなかったの?」
太央が私の手を強くギュッと握った。
私もビリビリと少し痺れの残る右手で握り返した。
そうか、離れてもまた握り直せばいいのね。
「……兄さんこそ馬鹿だよ。地位なんてどうでもいーじゃん。何で大人になってまで親の言うこと聞かなきゃいけないの?今まで頑張ってたんだからさー、もっと楽に生きなよ」
「生きなよって、お前が言うのか?」
「……あはっ、だって俺生きてんじゃんー。失敗、失敗ー」
「やっぱり、死ぬつもりだったんだよな。あー、お前は本当にもう、昔から心配ばかりかけやがって……、でも、間に合って良かった……」