レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
ゆっくりと冷たい空気を吸い込んだ。
喉が熱くて心臓が握りつぶされそうで苦しい。鼻もツンと痛なって目頭が熱くなる。
「ねぇ、大丈夫?」
「……」
アパートの近くの小さな公園。
ここまでどうやって来たのか覚えていないけど、固いベンチに座る私の隣には太央がいた。
「泣いてもいーよ」
「……っ、」
彼の彼女は私だ。彼と正式に結婚できるのは私だ。
ギリッと親指を噛む。
悔しい、悔しい、悔しい。乗り込んでも良かったのに。足が固まって動けなかった。
私の勘違いだったかもしれないのに、なんて流石に思えないけど。
でも、もし──。部屋に踏み込んで、アレを見てしまったら、私はどうしていたのだろうか。
「ほら、泣けよ」
「……は?」
「婚約者に裏切られてー、可哀想で、憐れで。とっても惨めな志保ちゃん」
「な、なに言っ…、」
この子が楽しそうに笑うから、カッとなったその瞬間。
冷たい唇がねっとりと口を塞いで、背中に手を回された。