レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
あの後、成央さんの車で山を下りて念のため朝一で病院の緊急外来を受診した。
私も太央も血液ガス分析という検査を行って、一酸化炭素中毒と診断されたのだけど。血中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の数値から軽症と診断され、大事に至ることは無かった。
「ああ、学校の養護教諭の先生が家に連絡くれたんだよ。太央の様子がいつもと違うって。学校にも来てないから心配だって……それで母さんが…」
保護者が子供の居場所を特定する機能を使うのはよくある事だ。
スマホを破棄する思考が無かったわけじゃないけれど。準備不足か、覚悟が足りなかったのか、今となっては分からない──。
「成央さんは、その後どうですか?」
「ん?結局、俺も仕事は辞めたよ。父さんも亡くなって丁度いいタイミングだったのかも」
「……え、」
「今の仕事は現場メインでね、ゼロから始める感じでとても新鮮だよ」
「あ、あの、おじさま亡くなられたんですか……?」
彼が顔色も変えず、あまりにも平然と言うものだから。言葉の理解が追い付けず呆気に取られた。
「あぁ、年明けに退院したんだよ。志保ちゃんは知らなかったよね?その時、自宅の風呂場で心筋梗塞を起こしてね」
「すみません、私、全然知らなくて……。そんな大変な時期に」
「まぁ、そうだろうね。志保ちゃんこそ大変な時期だったから、太央も伝えなかったんだと思うよ」
「……」
「あ、太央にちゃんと百箇日には家にいるよう志保ちゃんから言っといて。アイツ、すぐどっか行っちゃうからさ」