レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



おじさまが入院している時、"早くくたばればいい"と、あの子はそう言ったけど。本当はどう感じているのだろうか。
黙り込んだ私に成央さんが気遣うよう言葉を続けていく。



「太央は……、あいつはよく分からないけど。何も感じていない筈がない。血の繋がりが全てとは言わない。だけどさ、祖父母共に太央の母親は他界しているし、繋がってるのは俺だけなんだよ」


眉を下げて言葉を絞り出していく彼は、少し寂しそうな表情をしてから「半分だけど」と軽く笑って見せた。



「ほら、俺は母親は生きてるから時々会えるけど。でも、太央は自分の感情に鈍いところあるだろ?」

「……そうね。でも、羨ましいです。太央にはあなたみたいに弟思いな兄がいて。私にはキョウダイがいないから」

「えー、俺ぇ?婚約者裏切って、最低な事したのに?」


「……ふふ、本当ね」




「志保ちゃん、変わったね。うん、今の方がいいと思うよ」

「そうですか?成央さんも、重荷が取れて軽くなった感じがします」

「そうかな?」


こうやって彼と会話を交わす事なんて無いと思っていたのに。今こうして彼の車に乗って、笑い合っているなんて人生はどう転ぶか分からない。





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