レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「はい。先生ー、これのどれが赤ちゃんですかー?」
エコー写真を見て腰を屈ませた太央が、右手を挙げてやっと口を開いた。
「ここが頭で、こっちが体だよ」
「えー、頭でかっ」
「で、この小さい袋みたいのが心臓で、今日は動いてるのもしっかり聞こえてたんだよ?」
「へー、こんなんで生きてるんだー。俺、女の子がいーなー……」
「性別が分かるのは、まだ先になるんだけど……て、君、大丈夫?」
女医の先生が驚いたような声を出すから、すぐ横にいる太央に顔を向けると。太央の瞳から大粒の涙が溢れ出ていた。
「ちょっと、太央?どうしたの?ここ、診察室」
「ふはっ、志保ちゃんに赤ちゃんとか。マジで似合わねー。育てられんの?」
「ちょっと、それどういう意味よ」
「だってー、俺、どうしようって思うのに、頭ぐるぐるヤバいのに、すっごく嬉しいんだけどー。なんでだろ?」
「太央?」
「志保ちゃん。可愛がろうねー」
太央が私のお腹にふんわりと手を当てて、泣きながら目を細めて笑った。
巡り回って、私はこの人懐っこい笑顔を見た事がある。
──私ね、今度、赤ちゃん産まれるのー
──可愛がってあげてね
泣いている小さな女の子がいた。
それは、いつの話だっただろうか──?