レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
17.エピローグ



怯えるように膝を抱えて震えていた。1人じゃ立てなくて、あの薄暗い部屋の中で俺の帰りだけを待つ可哀想な志保ちゃん。
憐れで、惨めで、(いと)し過ぎて堪らなかった志保ちゃん。

志保ちゃんなんか、俺だけを必要としていたあの時のままで良かったのに。いっその事、鎖にでも繋いで外に出さないでおけば良かった。時々、そう思うことがある。





「太央、どうしたの?」



手を繋いで一緒に歩く志保ちゃんが、首を軽く傾げた。
前と比べて表情はすごく明るく、雰囲気も柔らかくなった。前を向いて世界を広げていくその姿は立派だけど、俺としてはひどく気に入らない。



「だってさー、兄さんも義母さんも俺にたいしてすっげー厳しいんだもーん」


志保ちゃんに赤ちゃんできた話をしたら、2人にめちゃくちゃ怒られた。

あんな怒ることないのにー、と思い出しては唇を尖らせる。


戸籍の父親が空欄になってしまうから、兄さんがという話もでたけど、それは断固拒否をした。志保ちゃんにその話はしてないけど。

俺がまだ高校生で17歳だから、認知ってやつも親が関わってきて複雑らしい。



「でも、許して貰えて良かったわ」

「うん?」

「高校はもう遅刻早退しないで、大学へもちゃんと行って就職するっていう契約書。あなた書かされてたわね」


ふふっ、と笑う志保ちゃんの笑顔は俺だけに向けられるもので、天使のように可愛い。
既成事実は予定外だったけど、これで志保ちゃんが俺の隣にいる理由が1つ増えた。まぁ、志保ちゃんをつかまえた時点で、はなから逃すつもりなんかないけど。




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