レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「別に兄さんにー、応援してもらう必要ないけどー」
「お前、せっかく人が仲裁してやろうとしてんのに……」
また始まった太央と成央さんの口論を遮るように、おばさまがコホンと咳払いをすると、ピタッと言い合いがおさまって沈黙が流れた。
その沈黙を破って、最初に口を開いたのはおばさまだった。
「心境は少し複雑だけど、志保ちゃんにはとても可哀想な事をしたと思ってたの。成央くんが酷い事をして、……あんなことに巻き込んじゃって。まぁ、妊娠の件は太央くんの責任でもあるし」
「いえ、それは私が悪いんです」
あんな状況だったとはいえ、大人が18歳未満の子供、ましてや生徒(当時は)と関係を持つ事は認めらない。
唇を噛み締めたところで、おばさまがふっと目を細めて口元を緩めた。
「あのね、志保ちゃんは娘になると思っていたのよ。形は変わっちゃったけど……、こちらの責任もあるしできる限りの事は協力するわ。また、志保ちゃんが娘になると思っていいかしら?」
優しい声色で言葉が続けられるから、自分の顔がくしゃりと崩れていく。
「…………は、い」
「志保ちゃん、涙腺ゆるすぎだってー」
「そんな泣かないの。それと、太央くんは親になるんだから、しっかりして貰わないといけないわね!」
「えー?」
完全に認めて貰えたとはいえないけれど。
人の優しさに触れた時に泣きたくなるのは何故なのだろう。