レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「私はそんなこと望んでない」
「ふーん。志保ちゃんはそう言うと思った。頭がかったい真面目ちゃんだもんね」
知ったかぶりするからカチンとくる。
「彼女のこと、教えてくれないなら帰ってよ」
冷たく言い放てば、部屋にピリッとした嫌な空気が流れるから。ちぇっと唇を尖らせた太央が仕方なさそうに口を開いた。
「ナツは、兄さんの高校の同級生。本名は加賀奈都。志保ちゃんの3つ年上の27歳。駅前のファミリーレストランのチーフを務めてて、そして俺の家庭教師」
「太央の……?」
「そ。俺、奈都に勉強教えて貰ってるんだー」
「え…?」
「中学の時から」
「そう、なの?」
「うん。毎週木曜8時10時で。俺が中1の時からだから、奈都が大学生の時バイトでそのまま」
「今、社会人なのに?」
「まー、知人の子に教えてお小遣い貰ってる的な?」
まさかの繋がりに、唖然とするしかない。
「今日はそろそろ帰ろっかなー。遅くなっちゃたし、先生に怒られちゃう」
「え、あぁ」
「じゃぁね、志保先生」
この子はいつから、知ってたの?
鼻唄を口ずさみながら立ち上がり、部屋を出ていく太央をただ見送るしか出来なかった。