レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
18時になるタイミングで館内の照明が必要最低限に落とされて、ナイトモードに切り替わった。
幻想的な光と水面が混じりあう中。
深海魚が尾びれをひらひらと動かせば、酸素の泡がより一層輝きを増していく。
こういうロマンティックな場所は人気のデートスポットなのだろうな。
周囲を見ても恋人たちの姿しか見えない。
今まで、成央さんとこういう場所にきたことはなかった。
「凄ーい、綺麗ですね!!」
ぼんやりと水槽に目を奪われてたから油断した。
すぐ隣に奈都という女の人が瞳をキラキラとさせ、手のひらを合わせながら立っていた。
「……そうですね」
「えへへ、今日偶然会えて良かったですー!」
「…あはは」
「ずっと、お話してみたかったんです!成央くんの選んだ相手がどんな方なのかって!」
彼女が力強く私の手を取って、距離を縮めてくるから、思わず後退りしてしまう。
「きっと、凄く素敵で尊敬できる、とってもとっても素晴らしい方なんだろうなって!」
「……え」
「立派な芯があって格好いい、一目見ただけで同性でも憧れちゃうような特別な存在みたいな」
近い、近い、近い。
ぐいぐいと息のかかりそうな近さに動揺を隠せなかった。
「そ、んなことない…です」
「ふふっ、そうですね」
すぐ後ろは黒い壁。これ以上下がることは出来ない。
彼女の目が怖いくらいに見開かれ、私をギラギラと捕えて──。
「想像してたより、全然たいしたことないから。凄くがっかりしました!」