レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
チャイムが鳴ったばかりか、廊下には他の生徒の姿がチラチラといる程度。
そんな中、私のすぐ後ろについて歩く太央。
「先生のケーチ」
「……」
「ま、課題点なんて必要ないけどー」
「……」
「志保ちゃん、昨日楽しかったね」
ニィっと口許を緩めた太央が、私のすぐ隣に出て下から覗き込んできた。
「私は楽しくなかった」
「ふーん、そうなの?」
朝のメールの相手。その人に連絡先を教えたのは、この子しか考えられない。
「何で……、教えたのよ。あなたでしょ?奈都さんに私の連絡先を教えたの」
視線は前のまま、まわりに聞こえないよう棘のある台詞を口にした。
「俺じゃなくて兄さんかもよ?」
「成央さんは、そういうの教えていいか事前に確認してくれる人なの」
「へー、俺は?」
「あなたはっ、いつも勝手に…。とにかく、個人情報を勝手に人に教えるのは……」
「だって、奈都が先生と話しやすかったから、これからも遊びたいから教えてーって言ってきたからさ」
「……あの人がそんなこと、思ってるわけないじゃない。だって、成央さんの…」
「兄さんの?」
「な、成央さんの……」
──浮気相手
頭では理解しているのに、言葉が発せられない。まだ、受け入れられない私がいるから?
その響きにピンとこないからだろうか。
「そっかー、本気の相手だっけ?」