レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
深夜0時を回った静かな住宅街。
アパートの部屋に"ピンポンピンポンピンポン"とインターフォンの音が何度も繰り返し響く。
頭がぼんやりとする中でも分かる。
こんな鳴らし方は、あの子1人しかいない。
「うるさい。近所迷惑」
「あれ、開いたー……」
ふらふらと、おぼつかない足取りで玄関へ向かう。
ガチャリと扉を開ければ、案の定、制服姿のままの太央がしゃがみ込んでいる。
ただ、いつもと違うのは、雲に覆われた暗がりな空のせいか。太央の表情が少しだけ元気の無いように見えた。
「何の用?」
「ドア、開くと思わなかった」
「何も用が無いなら、早く家に帰りなさい」
「課題出しにきたー」
鞄から数学のノートを取り出して、「放課後って言うから」と手渡される。
え……、今更?
呆れて声も出ないでいると「寒い」と両手をこ擦り合わせながら、玄関の中に入り込んできた。
「ちょっと、勝手に入らないでよ」
「志保ちゃん、飲んでたんだ」
「……」
「わーぉ、ちょっと意外。結構な量、飲むんだね」
テーブルの上に広がるアルコールの缶を見て、太央がキョトンと首を傾げた。