レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
家へ帰ってから一度もスマホの画面を確認していない。
ミュートのマナーモード設定をして、ピカピカと光る受信ランプを見えないフリをしていた。
「もしかしてー、奈都から?」
「あっ…」
この子が私のスマホに手を伸ばして、簡単に開けてしまう。
「うわ、凄いね。新着メッセージ104件だって。てかさ、画面ロックくらいしなよ。不用心だな、志保ちゃんはー」
104件……。
そんなにきてたんだ。うつ向いたまま、何も言葉を返せないでいれば、「大丈夫だよー」と太央が私の頭にポンと手を置いて優しく撫で下ろす。
「奈都イイコだと思ったんだけどな。結構ぐいぐい攻めてくるね」
「……昼間から。学校にいる時からずっと鳴ってて」
「うん」
「成央さんには言えない、絶対に言えない」
「うん」
「なんで、彼女に責められるの?普通、責める立場にあるのは私でしょう……」
「ブロック……しにくかったらさ。とりあえずミュートしとけば?」
座り込んだ状態で向かい合う私達。
私の頭上に置いた反対の手で、勝手に人のスマホを操作していく、太央ギッと睨み付ける。
平然として、まるで他人事のようにヘラヘラして──信じられない。