レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「もとはといえば、あなたのせいじゃない!あなが勝手に連絡先を教えたから」
「んー、ごめんね?」
「あなたが、偶然を装って4人なんかで出掛けたから!」
「あれは、偶然だよ。ほんとほんとー」
──ナツ、愛してる
私に対するものと全然違った声のトーン。
愛おしそうに吐き出される息。甘くて、優しくて、私が欲しかったのに。
「あ、あなたが、あの日、成央さんの家に戻らせたからっ」
「あれは、戻ったのは、志保ちゃんだよー?」
駄目だ。太央が連絡先を教えたのは非常識だと思うけど。
それ以外は完全に憂さ晴らしだ。
今までの成央さんの態度。隠すつもりなんて無いんだ。私に気付かせて、私に全て任せるつもりなんだ。
このまま、奈都さんと関係を持ちながら結婚するか、結婚をやめるか。
「眠れないのよ、ずっとあの日から……んッ、」
冷たい唇が私の口を塞いだ。
「や、やめっ……」
何度もゆっくりと、優しく、包み込むように。
まるで、子供の頃から大切にしてきた宝物のを扱うように。
「んっ、んん……」
「志保ちゃん、泣かないで」
喉が熱くて痛くて、生温かい何かが頬をボロボロと溢れ落ちていく。
この子に言われるまで、自分が泣いていることさえ気が付かなかった。