レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
後頭部に両手をまわされて、その力は強くて逃げられないのに、落とされるキスは必要以上に優しくて戸惑いを隠せない。
「や、だ……」
「志保ちゃんお酒の甘い匂いがする」
唇から、鼻、頬、目蓋と。顔の至るところに唇を付けられて、流れる涙を拭うよう舌を這わせて目元の下まで舐められていく。
「志保ちゃんの涙、俺好き。しょっぱくて甘ーい」
「……な、んで、涙がっ、甘いのよ」
太央がクスリと笑う。
泣いている子供をあやすよう、背中を柔らかく撫でられて。今度はぎゅっと抱き締められた。
「志保ちゃんのだったら何でも美味しいよ」
「え……?な、に言って」
「眠れないんでしょー?」
「そ、そうだけど」
「志保ちゃんが眠れるまで傍にいてあげる。ずっと、ずーっと俺がついててあげるー」
成央さんじゃない男の人の香り。薔薇の香りはしない、太央の匂いだ。
この子の胸の中に顔を埋めて、私は頭がおかしくなってしまったのか。
太央の背中に手をまわして、ゆっくりと目を閉じる。
太央なんかに抱き締められるなんて、不安材料でしかないのに落ち着くなんておかしい。間違っている。
「俺がいるから、大丈夫」
「……うん」
「おやすみ、志保ちゃん」