レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
前回のキスは、成央さんの家の帰りで事故みたいなものだった。けど、昨日のキスはまずい。半分同意したようなものだった。
アルコールが入ってたとはいえ、キスを許して生徒を泊めた事実は完全にルール違反だ。
「ねー、志保ちゃん。もう8時だよー。間に合うの?」
「え……?」
太央の台詞に、一瞬頭が真っ白になる。
普段なら8時10分出勤だから、7時40分に家を出なければならないのに。
昨日の夜からシャワーも浴びていないどころか、準備も何も終わっていない。
どうしたらいいの。
焦燥感に駆り立てられるのに、気持ちだけが先走って体が動かない。
「今日はさ、学校休んじゃえばー?」
「……そ、そんな軽々しく言わないで」
学生時代だって、こんなこと一度も無かったのに。太央の軽い口調に苛立ちを隠せないで言葉を返せば。
「どうせさ、志保ちゃんずっと具合悪かったんでしょ?眠れてなかったみたいだし」
意外にも、この子は私が体調が良くないことに気が付いていたんだ。
目の前の首を傾げる男の子に、ほんの少しだけ心が揺さぶられたことに頭が混乱する。
「ズルじゃないよ?休養だから大丈夫だよ。今の時代さー、倒れるまで働くことないじゃん。体調管理も大切でしょ?」
「その通りだけど、突然休むなんて社会ではあり得ないの…」
壁にかかった時計に目を向けると、針がどんどん進んでいくのが見えた。