レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「ごめんね、急におしかけて」
扉を開ければ、心配そうに眉を下げる成央さんが立っていた。
彼にしては珍しい。スーツ姿で仕事帰りにそのまま来てくれたのだろうか。
「具合、大丈夫?あ、玄関《ここ》でいいから」
「え?あ、はい」
「全然、スマホにも連絡つかないから心配したよ」
「あ……、ごめんなさい。今日はスマホを殆ど見ていなくて」
朝、学校へ休みの連絡をしてから一度もスマホを見ていなかった事を思い出した。と同時に、あの彼女からのメッセージはどのくらい溜まっているのだろうかと不安も沸き上がる。
「悪いとは思ったんだけど学校へ連絡しちゃったよ。病欠だって?」
「えっ……」
「日曜も具合悪かったのに無理に振り回してごめんね」
「いえ、その、……私こそすぐに連絡しなくてすみません」
あの子が静かに隠れたままでいてくれるか、気が気じゃない中。
成央さんにそこまで心配をかけてしまったのか。嬉しいと感じたのは一瞬で──。
「えーと、あと。……奈都、あいつと何か話した?」
「……いえ」
「そっか」
眉間に皺を寄せて曇った瞳を足元に向ける、これはどういった表情なのだろうか。奈都さんを心配しているのか、それとも私の心配なのか。
彼の意図が分からなくて一気に強い不安に襲われる。
「……実は、昨日の夜、父さんが倒れたんだ。志保ちゃん……、太央のこと知らない?」