レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
07.イエロー
──学校へは行ってるみたいなんだけど、家へは戻ってないみたいなんだ
──えっ、まだ帰ってないんですか?
──もう、母さんが心配しちゃってさ
成央さんから連絡があったのは、あれから2日後のことだった。
次の日、数学の授業は無かったけど学校へ出席しているようだったから安心していた。
あの子は私と成央さんの会話を聞いていた筈だから、確実に家に帰ったものだと信じて疑わなかったのに。
カツカツとヒールの音が廊下に響き渡る。
足早に向かう先は、きっとあの子が避難しているであろう場所。
ガラッと勢いよく扉を開けると、温かい空気が漂ってくるのと同時に保健室独特な薬品の匂いが鼻についた。
「三木先生、どうしたの?また頭でも痛くなった?薬でも…」
「太……、黒木くんいますか?」
「え、あー、そこで寝てるけど……え?」
やっぱり、ここにいた。目を丸くする橘先生を押しのいて、ベッドのある方へ足早で向かう。
躊躇なく白いカーテンを開けると、見慣れた黒髪が目に入って。白い毛布の中がもぞもぞと動くから、それを一気に剥ぎ取った。