レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
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(黒田 成央さん)
志保ちゃん、ありがとう
助かるよ。アイツのことよろしく
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振動音に気づきスマホの画面に目を向けてから小さな息を落とす。
電源ボタンを長押しをして画面が真っ黒になったのを確認してから、再び鞄へしまった。
あんなことを言われたばかりなのに。
学校が終わった後、一緒に病院へ向かわなければならないのか。
「いつも太央が迷惑かけてすまないな」
「いえ、そんなことないです」
総合病院の一室。ベッド上に、成央さんの父親が半分体を起こして座っている状態だ。
右腕の内側に点滴の針が刺さった状態ままガーゼで止められているのが少し痛ましいけど。病人なのに威圧的な雰囲気はいつも通りにある。
制服姿の太央は普段見せないような顔をしていて、あえていうなら"無表情"という表現が合っていると思う。
「本当にコイツは成央と違って何もできない奴で」
「太央くんお勉強も出来て、教室でいつもお友達とお喋りして、楽しそうですよ」
「全く、何考えてるかも分からんし」
なんて、本人が目の前にも関わらず、不平ばかり口にするから。何故か、私が太央をフォローする羽目になる。
はぁ、この空間の異様さに気が重くなってくる。