レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「今回のこともあって、出来るだけ早めに一緒に住めればいいなと思ったんだけど……」
もとから同居の話はあった。来春、籍を入れて何年も後の話だと思っていたのに。時期を早めたいという事なのか。
「えっ、志保ちゃん。うちに住むってことー?」
「違います」
太央が目をランランとさせるから、思わずバッサリと切れば。
「そうよね、こんな急に同居なんて嫌よね。ごめんなさいね、急に」
「そんなことないです。ただ、成央さんにも相談しないと……」
おばさまが目に涙を浮かべて悲しそうな声を出すから、慌てて否定をせざる得なくなる。
「じゃぁ、前向きに検討してくれるのね!良かった、安心したわ」
「えっ、マジでー?いつから?いつから?」
「ろ、廊下で騒がないでください」
どうしよう。成央さんに連絡も相談もなく話が進んで、彼に迷惑をかけてしまうのではないだろうか。
これ以上、成央さんの負担になりたくない。
「部屋も空いてるし。あの人の入院も長引きそうで不安だし。なにより、無駄に広くて寂しかったのよー。それに、成央くんお片付けが出来ない子でしょ?志保ちゃん来てくれると助かるわぁ。とりあえず、今日泊まりに来ない?せめて夕飯だけでも……」
「志保ちゃん、来るの?そしたら俺ちゃんと帰るー」
「あなたは、私が行かなくてもお家に帰りなさい」
病院の廊下でそんなやり取りをする中──、
「こんにちは!皆さんお揃いで、お見舞いですか?」
後ろから今最も聞きたくない声が耳に入った。