レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「あら、奈都ちゃんじゃない!もしかしてお見舞いにきてくれたの?」
おばさまが両手を合わせて、表情をぱぁっと明るくさせた。
「はい、おじさんが倒れたって聞いて心配で心配で」
「ありがとう。あの人も喜ぶわよ。でも、今看護師さん来てるからどうかしら」
「えー、顔だけでも見たかったのに残念……」
当たり前のように近付いてきた彼女は、しゅんと落ち込んでいる様子をみせる。
なんで、奈都さんがここに?彼女に対し反射的に緊張が走って背中に嫌な汗が流れた。
この人と関わりたくなくて、連絡を無視して約1週間。
ミュートにしたままだから、メッセージがどの位たまっているのかは知らないけど。
そうだ、このまま逃げてしまおう。
ゆっくりと、1歩1歩足を後退させる。
「あの、じゃぁ、私はこれで……」
「あ、待って、志保さん!!」
「志保ちゃんと奈都ちゃん、知り合いなの?」
帰りたい帰りた帰りたい。
今すぐ帰りたいのに、帰れないなんて。
「はい!この間、成央くんと太央くんと一緒に4人で遊んだんです!」
「あらー、お友達だったなんて、知らなかったわ」
「ねっ、志保さん!」
彼女が私ににっこりと笑顔を向けたけど、なんて返事をしていいか分からなくて。
目の前の現実が、急に色褪せて見えてきた。