レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
理事長室に呼ばれるのは、就任したとき以来だ。
艶のあるソファに腰かける理事長が、重い息を吐いて私に目を向けた。
「生徒たちの間でね、2年A組の黒木くんと三木先生が特別な関係だという話が入ってきましてね」
「はい」
心臓がやけにうるさい。
先生方の耳に入ったのは、ただの噂の方でいいのだろうか。
「こんな噂が広まってしまうと、生徒だけじゃなくて保護者にまで伝わってしまうからね。何かと問題が出てきてしまうんだよ」
「申し訳ありません」
「いえね、来年ご結婚を控えていて。相手の弟さんが黒木くんという話は聞いていたので、ただの噂だと思っていますが」
彼女が手に入れたあの写真は、まだ学校側には送られていない。大丈夫、と自分に言い聞かせる。
「申し訳ありません。彼と……、黒木くんと出掛けたりしたのは本当です。でも、2人きりではなくて、黒木くんのお兄さんもともう1人女の人も一緒でした」
下手に隠すより、事実をきちんと説明しておいた方が信憑性が高まるはず。
太央と私はただの教師と生徒ではないのだから。
「義理の弟になるとはいえ……。軽率な行動で、教師という立場の思慮に欠けていました。本当にすみませんでした」
「頭を上げてくださいよ、三木先生。先生は何も疑われるような事した訳じゃないんでしょ?」
深く頭を下げれば、理事長も優しい言葉をかけてくれる。
私はどこまで狡いのだろうか。
「まぁ、人の噂も75日といいますか、噂も去るとは思います。もう冬休みですし」
「はい」
「来春とのお話でしたが……。この際、公表してしまいましょう」
「え?」
「あなたと黒木くんの関係について」