レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加


気味が悪いと感じた。穏やかな雰囲気を醸し出す空気が歪んでみえて、この空間の中、私だけが地に足がついていない異次元にいるようだった。



「あの人から、病院で出た鶏肉が小さくてパサついて不味いって怒りの連絡がきたわ~。ほら、写真付きで」

「父さんらしいね」

「元気じゃん」


おばさまがスマホ画面を見せると、成央さんの柔らかな声のトーンに太央のどうでもよさげな声が続けられる。

急に漠然とした不安に襲われて、胸の動悸がやけ大きく耳に響いてきた。
室内が熱いわけじゃないのに、背中に冷たくて嫌な汗が流れていく。

今、ここは黒田家で、私はこの家に泊まりに来ていて、成央さんに別れの提案をして…でも食事を一緒に食べている。そのことに疑問を感じずにはいられない。
これは夢なのだろうか。それならば、どこまでが現実だったのか分からなかった。



「今日、奈都さんも誘ったんだけど。仕事があるって断られちゃったのよ~。残念だわ」

「あぁ、飲食業だからね。仕方ないよ」

「ねぇ、チキンもう1個食べていい?」

「太央くん、育ち盛りだからどんどん食べてね」











ドンと、足の脛を前から蹴られて我にかえる。



「……っ!?」

「志保ちゃんは食べないのー?」


太央が子供みたいな無邪気な笑顔を私に向けた。


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