レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



「やだー、志保ちゃん。成央くんの部屋でいいのに。遠慮しないでって……あんな部屋じゃ2人寝れないわよねー」


成央さんの部屋が人が入れる状況じゃなくて良かった。
おばさまも納得してくれて、その日は1階の和室の客間に泊まる事になったから。





「ごめんね、部屋に2人寝るスペース無くて」

「いえ」

「じゃぁ、おやすみ」


顔を下に向けたまま襖を閉じようとした瞬間──、



「……おやすみな……っ?」


彼の大きな腕が背中に回されてギュッと抱き締められた。



「ごめんね、大切にできなくて」


変わらない優しくて穏やかな声のトーンが耳に響くから、心が大きく揺れる。
やっぱり"大切にされてなかった"のだと、彼の言葉が胸にズシリとのし掛かって。



「な、成央さん……あの、さっきの件、考えておいて下さい」


でも、もし彼の答えが前向きなものだったらと期待してしまう浅はかな自分もいて。決心はぐらついたまま。
ぐっと、両手を伸ばして目の前の人を押し離した。



「うん、分かった」


襖を閉めながら顔を上げれば、少し悲しげに微笑む成央さんが見えた。



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