レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加





「……志保ちゃーん?あのさ、抵抗してよ?」

「あぁ、うん」

「ねぇ、今日おかしいよー?」

「うん」

「それともさ、していーの?」


キョトンとした大きな目が向けられた。
まだ、あどけない幼さの残る瞳。

髪を撫でるようにとかして、その毛先を指でくるくると巻いて自身の唇に当てる。

太央は私のことを1番に貶すのに、凄く優しく、誰よりも大切に触れてくるから。

時々──、本当に目を瞑ってしまいまくなる。






「駄目、に決まってるでしょう。あなた何考えてるの?」

「あは、いつもの志保ちゃんだ」


瞼が熱い。視界がぼやける。
いつもの私に笑ってくれる、"いつもの太央"に泣きたくなるのは、何故なのだろうか。



「……でも、眠るまでなら…隣にいてもいい」

「志保ちゃんっ♡」

「くっつかないで。眠れないだけだから」


後ろから抱き締められて、この子の温かい体温が伝わってきた。
理由をつけてまで、太央をそばに置いたのはいけないことだって分かっている。

本来なら、この子なんか追い出せばすむ話なのに。
この時の私は、心細くて1人じゃいられなくて、誰かに寄りかかりたかったから──。


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