レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
探したのに、偶然会えた……?
絶対に偶然の筈がないと、奈都さんの言葉に疑問を抱かずにはいられなかった。
「ドラックストアで睡眠導入剤を購入したって聞いたんですけど!志保さんは不眠症なのでしょうか?」
目をギラギラとさせて首を傾げる彼女は、痕が残るんじゃないかと思うほど強く、私の手首を握る。
その白くて細い手は、意外な程に力が強くて、腕を上下に動かして振りほどこうとしても、はがすことが出来ない。
「もしかして、私のせいで夜眠れなくなっちゃったとか?」
「い、いえ……」
「心配してたんですよ?私のせいだったら、申し訳ないじゃないですか!!」
「あの……、私も奈都さんと会って話をしたかったんです」
「えー、本当ですか?嬉しいです!!私もずっとお話したかったので、どこ行きます?ゆっくりお話がしたいです!!」
ぱぁっと全快の笑顔を向けられて、彼女の手がやっと離れたことに安堵した。
でも、私にはやらなきゃいけないことがある。
私は彼女にお願いをしなければならない。
頭を下げても、例え、土下座したとしても、あの子とのデータを消去して貰えるよう交渉をしなければ──。