真・T☆LOVE 〜滅亡の時〜
道端では人目を引くため、とりあえず、停めてある車に彼女を座らせ、話を聞いた。

彼女の話では、その花屋の主人は、人の心を花で見通すことができ、自分はそのおかげで命を助けられたということであった。


自分のせいで泣いていたのではないことが分かり、ホっとした鬼島。

「そうですか、不思議なこともあるもんだな。その花・・・そうだ!」

鬼島は、スーツの内ポケットから、小さな手帳を取り出した。

「これは、俺の母が好きだった花だ」

開いた手帳には、小さなベニバナの花が押し花になって挟んであった。

「こうしておけば、ずっと一緒にいられるぜ。ほらよ」

そう言って、ダッシュボードから、新品の手帳を取り出し、彼女へ渡した。

「よろしいのですか?」

「おう、どうせ使うことなんかねぇ手帳だ。好きにしてくれ」

「ありがとうございます」

そうして、彼女は、オトギリソウの花を、手帳に挟み込んだのである。



彼女を駅へと見送って、車に戻りかけた鬼島は、いつの間にか花屋のドアを開けていた。

「ようこそいらっしゃいました。どうぞどうぞ、こちらへ」

小さなテーブルへ、案内されるがままに座る。

少しして、小さな鉢植えとコーヒーを持って店主も席についた。

「何か、お悩みの様ですが・・・、こんな年寄りでよかったら、お話しになってみませんか」

ヤクザ社会の悩み事を相談できるわけはない。

しかし、店主の不思議な雰囲気に、鬼島は引き込まれていったのである。
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