真・T☆LOVE 〜滅亡の時〜
「ガラガラ」

玄関を開ける。

家の中には、どこか懐かしい匂いが漂っていた。

「ごめんください。おじゃまします」

ゆっくりと中に入る。


家の中は、誰かかが管理している様で、きれいに掃除もされていた。

「へぇ・・・なかなか趣《おもむき》あっていいじゃねぇか」

「無理しないでいいわよT2。あなたに『おもむき』なんて似合わないわ」

「確かに。って、おい!いいじゃねぇか、たまには」

微笑むラブ。

素足になって、お茶の間に上がる。

テーブルに置かれたアルバム。

二つ並んだ椅子。

その向かいにある壁を見つめるラブ。

じわじわと、その瞳から涙が、頬を伝って流れ落ちる。


桜の木の下で、優雅に微笑む女性。

メイの祖母、多恵の写真。


学生服姿で、凛々しく立つ少女。

メイの母、美紗の写真。


そしてその隣で、にこやかに笑う赤ん坊。

母である美紗が、わが子を手放す夜に撮った、メイの写真であった。


ラブは、その板の間に正座し、深々と頭を下げた。

多恵、美紗、メイ。
3人の涙が染み込んだ床に、ラブの涙が落ちる。


「美紗さん。芽衣《メイ》は、とても立派に生きました。守ってあげられなくて、本当にごめんなさい。でも、彼女は、代わりに、私を守ってくれました。彼女の想いは、私の中にあります。これからもずっと、一緒にいさせてください。メイ・・・ありがとう」


色々なことが思い出され、涙が止まらなかった。

暫くの間、T2は、拳を握り締めて、ラブのその姿を見つめていた。


「ラブ、もうそろそろ行こう。家族に水を差しちゃいけねぇぜ」

そっとラブを抱き起こす。

「ありがとう。T2、あれを」

T2が鞄から風呂敷包みを取り出し、テーブルに置く。


「美紗さん。残念ながら、彼女の遺骨はありません。変わりに、これをお返しします」


包みを開く。

それは、美紗が子供の頃、父親から授かり、自分の形見として娘のメイに送ったカメラであった。


そのカメラをテーブルに置いて、二人は家を出た。

玄関前で、改めて家に向かい、二人は深々と頭を下げた。
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